こんにちは!東京・都心ならではの狭小地にローコストでデザイン注文住宅を設計・施工する建築設計事務所ARCHIBLAST(アーキブラスト)設計担当の佐々木です!
今回は、居室と納戸の違いについてお話をさせて頂きます。
間取り図面の部屋の表記が「居室」と「納戸」に分かれているのを
ご覧になられたことがある方も多いと思います。
同じ部屋なのに何が違うの??
と思われている方もいらっしゃると思いますので、
本日はこれらの違いについて触れていこうと思います。
【部屋の表記】
建築確認申請上、基本的に部屋は「居室か納戸か」で区分けがされています。
部屋の名前の記載方法は様々で、「寝室」や「作業部屋」などのように
部屋の用途をそのまま記載する形もありますが、物件の販売図面などを見ると、
3SLDK(=居室3部屋+納戸1部屋+LDK)というように、納戸は「S」などで表記がされています。
→Sは「サービスルーム」の略称です。
LDKはそもそも居室であることが前提になっています。
【居室と納戸の分かれ方】
これは、「採光・換気・排煙」の3つの要件(=計算)に関わっています。
初期のプランニングの段階ではあまり意識をしない方もいらっしゃるかもしれませんが、
これらの3つの計算が全て成り立つことが「居室」になる条件になっています。
※他の要因(平均天井高さなど)に関わってくる部分もありますが、
ここでは上記の3つに関するお話をさせて頂きます。
1.採光計算
採光という言葉を聞いてイメージするのは「部屋の明るさ」かと思います。
部屋がどのくらいの明るさを確保できるか?といったところですね。
しかしながら、これは現実的な明るさとは別の考え方で、
あくまで以下の内容に基づいた上でクリアができれば採光計算が満たされる
という点にご注意ください。
(隣地が空き地で自分の部屋の日当たりが良い!という場合でも、
建築基準法上は納戸扱いになることがよくあります。)
◎クリアの為の条件:採光に有効な窓が、部屋の床面積の1/7以上あること。
採光計算は少し面倒で、計算の為には窓(開口部)面積の他、採光補正係数というものが用いられます。
参考までに、採光補正係数は以下の式で計算されます。
採光補正係数=D/H(採光関係比率)×A-B
(D :開口部から隣地境界線等までの水平距離)
(H :直上部の建築物の部分から開口部中心までの垂直距離)
(A・B:地域・区域に応じて定められた数値)
※天窓は、算定値の3倍の数値とする。
※開口部の外側に90cm以上の縁側などがある場合は、算定値の0.7倍の数値とする。
※数値が3を超える場合においても、最大値は3とする。
…これだけではよくわかりませんね(笑)。
これは細かな計算を行なった上での最終的な判断となる為、これ以上の内容はここでは省略させて頂きますが、
部屋の窓を採光計算に有効な窓にしようとする場合について簡単に説明すると、
① 窓の設置位置から隣地境界等までの水平距離が、離れている多いほど計算が有利になる。
② 窓は、高い位置に設置するほど計算が有利になる。
③ 天窓が付いている部屋は、それだけで居室扱いになることが多い。
④ 道路側に向いている窓は、採光窓としてはかなり有利に計算ができる。
ということです。
都内の住宅において、1階の奥側に存在する部屋を居室扱いにすることが出来ないのは
主に上記の①と②の影響が大きい為です。
反面、上記の①~④の内容に意識をしながらプランニングを行なえば、
都内の住宅においても全ての部屋を居室扱いにすることも可能です。
2.換気計算
これは解釈が比較的容易で、換気に有効な窓(=開け閉めが出来る窓)が
必要量設置されているか?という点で判断されます。
◎クリアの為の条件:換気に有効な窓が、部屋の床面積の1/20以上あること。
部屋の面積を10㎡とすると、10÷20=0.5㎡。
→開け閉めができる窓の面積の合計が0.5㎡以上あればクリアとなります。
(引違い窓は、開け閉めできる部分が窓全体の半分になる為、
窓面積の半分を有効換気面積として計算に使用します。)
3.排煙計算
煙を外に逃がすことができる窓の面積を計算します。
◎クリアの為の条件:排煙に有効な窓が、部屋の床面積の1/50以上あること。
部屋の面積を10㎡とすると、10÷50=0.2㎡。
→排煙に有効な窓の面積が0.2㎡以上あればクリアとなります。
※排煙計算に使うことが出来る窓の設置位置には決まりがある為、注意が必要です。
(部屋の天井から80cm以下の範囲に存在する窓は、排煙計算には使えません。)
【補足:建築確認審査機関について】
建築確認審査機関による審査基準は、意外にも審査機関によりバラバラです。
今回の話に関連した部分で言うと、1つの建物における「居室の部屋数の最低数」です。
例:LDK+4部屋=計5部屋の建物の場合
◎審査機関A:LDKの他に1部屋が居室扱いになっていればOK。
→居室:LDK+1部屋=2部屋
納戸:3部屋
◎審査機関B:全体の部屋数の過半が居室扱いになっていればOK。
→居室:LDK+2部屋=3部屋
納戸:2部屋
これらのように、建築基準法で定められていない部分については
各々の検査機関が設けているルールによるところが大きいです。
確認申請を出した後、居室になる予定だった部屋が結果的に納戸になった…という話も聞きますので、
居室の数にこだわりたい方は、予めその旨を設計士の方にお伝えした上で
プランニングの依頼を行なうことをお勧め致します!
ARCHIBLAST(アーキブラスト)は、東京・都心ならではの狭小地にローコストでデザイン注文住宅を設計・施工する建築設計事務所です。
狭小地でも広く感じられる住まいを建てたいとお考えの方は、ぜひご相談ください。