こんにちは!東京・都心ならではの狭小地にローコストでデザイン注文住宅を設計・施工する建築設計事務所ARCHIBLAST(アーキブラスト)設計担当の佐々木です!
本日は
「東京都内の10坪の土地に対して、建物はどのくらいのボリュームが入るか!?」
という点に関してお話をさせて頂こうと思います。
タイトルを見て「家自体が10坪!」と思った方!!
ちょっと意味合いが違います。すみません笑
【10坪の土地】
一般的に、狭小地は15坪程度の土地を示すことが多いです。
これよりも更に小さい敷地である10坪を面積に換算すると、おおよそ33㎡です。
「そんなに小さい土地に建つ建物に住むことができるの??」
と感じられる方もいらっしゃると思いますので、実際に計画しながら確認していきましょう!
【規制の確認】
弊社で設計を行なうエリアの条件は、以下のケースが多いです。
・用途地域:住居系
・指定建ぺい率/容積率:60%/200%
・防火指定:準防火地域
・前面道路幅員:4m
・高度地区:2種
→今回もこの条件に当て込んで考えて行きます!
【建築面積・延床面積(≒容積対象)の最大値の確認】
・建築面積の最大値=33㎡×0.7=23.10㎡
→準防火地域の準耐火建築物の為、10%の緩和を受けています(60+10)。
・容積対象床面積の最大値=33㎡×1.6=52.80㎡
→前面道路の幅員が4mであることに加え、用途地域が住居系の為、容積率の最大値は4m×0.4×100で160%となります(指定の200%との比較で小さい数値を優先)。
【敷地に対する建物の配置の確認】
仮に、敷地の形状を4.4m×7.5m(=33㎡)としてみましょう。
以下の画像において、白線が敷地ラインです。
・接道:東側4m
・真北:図面において、敷地の真上方向
とします。
この敷地に建物を配置してみます。
水色の一点鎖線が建物の配置です。
*民法第234条の関係上、隣地の方の承諾が無い限りは
建物の配置を隣地境界線から一定の距離を保たなければなりません。
建築面積の最大値が23.10㎡であることに対し、
上記の建物における建築面積は、3.185×6.5975=21.01㎡となります。
*建ぺい率の最大値は70%でしたが、
上記の結果を計算すると、21.01÷33×100=63.67%となり、最大値の70%ギリギリまで計画出来ないことがわかります。
「これではギリギリまで床面積を確保することが難しいのでは…」と思われがちですが、建ぺい率を最大値まで計画しなくても、容積率(≒容積対象床面積)をギリギリまで持って行くことが重要です!!
【斜線制限を考える】
建物の立体的な形状を仮で作りつつ、斜線の制限をCADで描いてみます。
尚、受ける斜線の制限は二つです。
1 道路斜線:前面道路の対面側の道路境界線から計画建物に向かってくる。
今回は住居系のエリアの為、斜線の勾配は1:1.25。
2 高度斜線:隣地境界線の真北方向から真南方向に向かってくる。
今回は2種高度の為、斜線の勾配は1:1.25。
→建物の形状はざっくり以下のようになります。
赤線:斜線ライン、黄色線:建物の形状 です。
【最低限必要な空間を考える】
住宅における必須な空間として、お風呂、洗面所、トイレ、LDK,居室などが挙げられます。
お客様によっては車庫が必要な方もいらっしゃいますね。
→今回は車庫も含めて計画を行ないます!
【間取りを入れる】
おおよその建物形状が把握できたところで、プランを入れていきます。
各階の想定床面積から見て、現段階でおおよそ確定している配置は以下です。
1階:車庫、玄関、廊下、階段
2階:LDK、階段
3階:階段、居室
これに対して、先ほど確認した必須空間の残りの項目は、お風呂、洗面所、トイレです。
ここからはバランスが重要です!
・お風呂は1坪タイプ?0.75坪タイプ?
・トイレは1帖分?0.75帖分?
・居室は何帖?LDKの帖数とのバランスは?
・バルコニーは作ることが出来る?作らない方が良さそう?
…
これらを踏まえて出来上がった参考プランがこちらです!(途中の検討作業は省きます笑)
1階
ぱっと見、玄関ドア前に洗面脱衣室があるのはちょっと…と思われる方も多いと思いますが、
ライフスタイルによっては気にならない方もいらっしゃるのでは?と思います。
お風呂はあえて1坪タイプで設定しました。
生活の中で、お風呂はリラックス空間の一つ!!と考えている為、ここが狭くてはせっかくの戸建て住宅の癒し空間も半減してしまいます。
2階
LDKとトイレを配置しました。
トイレはなるべくLD空間から離して配置しています。
3階
こちらは部屋を2つ配置。
共用部であるホールを最小限の大きさにしました。
北側斜線からの逃げと屋根厚を考慮し、ホールの北側の天井高を1800mm確保する想定で、
ここから各階の天井高とフトコロ寸法を逆算していきます。
断面
高さ関係はこのようなイメージです。
3階の洋室は、平均天井高を2100mm確保するよう注意します。
【プランの振返り:面積計算】
ここで、作成したプランを見直してみます。
敷地面積 33.00㎡
建築面積 21.01㎡
床面積1 21.01㎡(車庫を除く床面積:13.71㎡)
2 21.01㎡
3 18.01㎡
延床面積 60.03㎡
容積対象 52.73㎡
建ぺい率 63.67%≦70%
容積率 159.79%≦160%
→床面積(容積率)を最大値近くまで計画することが出来ました。
【プランの振返り:間取り】
[1階]
各階の天井高さを確保する為、1階の床をGLから下げる形で計画しています。
車庫を設けたことで、1階には部屋を設けることが難しい結果になりました。
階段の上がり方向を車庫側に回すことで、空間の有効利用を行なっています。
[2階]
LDKとトイレを配置しました。
ダイニングテーブルとソファ・テーブルが配置できています。
[3階]
部屋を2つ設けました(階段の上がり口を建物の真ん中付近に設けることがポイントです)。
北側の天井が低くなる為、ベッドなどの家具の配置には工夫が必要になります。
また、建物が東西に長い形状の為、南北方向の耐力壁を設けることにも注意をしながら計画を行ないます。
※今回は割愛させて頂きますが、建物が一部道路斜線に当たる為、天空率の検討が必要になって参ります。
【最後に】
いかがでしたでしょうか。
今回は、10坪という土地において「住居系+道路幅員4m+2種高度」という厳しい条件で計画を行なってみました。
中には、同じ10坪の土地であっても、
「容積率を大きく設けることが出来る・高さ制限が厳しくないエリア」が存在する為、
単純に「土地が小さいから…」という理由だけで検討をやめてしまうのは勿体ないと思います。
都内の土地は高額です。
土地のご検討を行なう中で、今まで敬遠してきた(≒検討から除外してきた)ものの中に
建物を大きく設けることが出来る土地が意外に存在しているかもしれません。
これを機会に、検討の幅を少し広げてみてはいかがでしょうか。
今回の内容が、少しでもみなさまの土地探しのご参考になればと思います。
ARCHIBLAST(アーキブラスト)は、東京・都心ならではの狭小地にローコストでデザイン注文住宅を設計・施工する建築設計事務所です。
狭小地でも広く感じられる住まいを建てたいとお考えの方は、ぜひご相談ください。