断ちつつ繋ぐ、典雅な佇まいの家
7戸の3階建て共同住宅を木造で計画した。1時間準耐火の木造建築物。約半分のボリュームにコンパクトに1層2戸ずつの6戸のワンルーム住戸を納め、残りの半分をオーナー邸とした。2つの道路に面する正方形の敷地に、天空率を目一杯に活用して最大限のボリュームを据えると、このボリュームの中心まで光を入れることが難しくなる。そこで、建物の真ん中にオーナー邸の木製ストリップ階段を大胆に設け、屋上からの光をできるだけ下階に届けるように工夫している。この階段は、オーナー邸を垂直方向に力強く繋げながら、隣の共同住戸の音を断つ役割も果たしている。
オーナー邸のエントランス空間は、トレーニングスペースを兼ねたオープンなコミュニティゾーンとなっている。駐車場と意識的につながり、1階の奥に位置しながら緩やかに開かれた場所として内外をつなぐ。2階のキッチンは北側に位置し、2つの勾配天井の天窓が、一日中優しい光を届けてくれる。空の様子がいつでも感じられる、住戸全体の司令塔となる。
至る所の照明計画に間接照明を採用し、壁や床のタイルのデザインを引き立てながら、ストレスのない大人の質感に満ちた空間を演出している。
素材をふんだんに取り込みながら、美しさの均衡を上品に整理したリビングの先には、大きく広いバルコニーがたっぷりの光とともに屋外の空気を一気に運んでくる。
ファサードに特徴的な”S型”の白いアクセントを設けることで、建物全体の一体感を保ちながら、周辺環境に溶け込む重厚感のある佇まいとなっている。